愛を知るということ

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表情をひきつらせた女、そんな女を 背後に隠す男。 ナンダ、ヤッパリ、ウソダッタノカ そう思うと何だか笑えてきて、 ポケットの中に忍ばせておいた ボイスレコーダを押した。 「そのお腹の、俺の子なんだよね?」 人当たりの良い笑顔を見せて悟は 言った。すると彼女は首を横に降り、 小声で言い返す。 「ち、違うわ……、彼の子よ」 「あれ~そうなの?君が俺の子だって 騒ぐからお金渡したのに」 悲しくもないのに眉を下げて困った顔を すると、口を開いた男を遮って女は声を 荒げた。 「そんなの知らないわよ!!あんたなんて 知らない奴にお腹の子の父親の資格 なんて有るわけ無いでしょ!?」 うん。知ってる。と満足した悟はボイス レコーダを取り出して再生。 青ざめるのを確認してから背を向けたが 去り際、再び振り替えり男を指差した。 「札に旗印見つけたら、それ、俺から 貰ったと思った方がいいよ。 まぁ……もぅ見てるかもしれないけど」 と忠告して立ち去り老婆が営む煙草屋に 寄って寮に帰った。 部屋に着くなり鞄を投げると遠くの方で 何かが割れる音がしたが気に求めず、 煙草の封を開けて火を移し、ベッドに 仰向けに寝そべり、思いに耽る。 自分の巻いた種が大きくなりすぎて 手に負えない。 「かと言って他に無いしな……」 ピピピッ ピピピッ ズボンのポケットで携帯が鳴り、 メールを開くと帝から集合命令。 仕方無くベッド脇の机に置いてある 灰皿で火を消して部屋を出た。 億劫としか言いようがなかったが、 部活必須の学園に在籍している以上 ゆっくりな足取りで部室に向かう。 戸を開けるなり、今まで寝てましたと 言わん張りに、寝ぼけ眼で欠伸を 1つして「何かあったの?」と入って 行くと、帝の席に葉瑠が座っていた。 「ハロー!!」 その声は全校集会の場面で聞いた事が あるような、ないような……。 なかなか名前を思い出せずに誰だっけと 頭を悩ませていると、 「会うのは初めてだっちね」 と帝と同じ喋り方をしていたから 兄弟だと気づき双方簡単に自己紹介を して握手を交わし、各々が席につくと、 葉瑠が報告書を読み始め、悟にそれが 自分の事だと直ぐに分かった。 帝や康介からも詳細に関する質問をされ ありのままを簡潔に答えると、いきなり 机を叩き葉瑠は怒りに燃えた。
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