愛を知るということ

17/22
前へ
/22ページ
次へ
それでも、男となんてあり得ないと 否定的に考えながら紅茶を入れようと 用意していると視界の隅に鞄が映る。 「ヤバッ、忘れてた……、 皿鞄の中だった……」 脳裏に甦った回想で壊れた音の正体が 康介から借りた皿だと気づき青ざめる。 後ろからは「あぁ~ぁ。」と葉瑠。 鞄の中は悲惨な事態だった。 教科書はベタベタ、散乱する破片、 真っ二つの皿、迂闊に手を突っ込んでは 危ないと、物を出し、シンク向かって 鞄を逆さにする。 パラパラと落ちた破片を片付けをして 一息つくと、再び葉瑠のお腹が鳴った。 「仕方ない、外の店に連れてってやる」 「その前にお皿買いにいかなきゃだ」 見事に割れてしまったお皿が眠る袋を 指差す。 「あれって……、アンティークか?」 「ロイヤルウースターだっち。」 「この辺り売ってる?」 「いや~ウースターはさすがになかよ。 何なら僕の部屋にあるの持ってく?」 ん……、考える素振りを見せた悟。 買えるに越した事はないが、 正直に謝ってからでも遅くはない。 「いらね、謝ればいいだろう」 「許してくれるっちか?」 「知らねぇ」 とか言いつつ、皿は後回しに葉瑠を 連れて遊びに行った。レモンパイを ご馳走して、ゲーセンに行って、 知らずの内に悟の心は満たされ始めた。 ただ笑うだけで、ただそれだけなのに。 「遅くなっちまったな。」 「帝に怒られるっちゃ!!!!!!!」 外に出た時には既に真っ暗、月明かりの 綺麗な夜だった。 電話越しに怒られた葉瑠は、電話切ると 「アップルパイ売ってる店、未だ空いてるかな……?」と呟いた。 「もう無理だろうな。」 携帯の時計機能は22時22分を示して おり、カフェやパン屋は閉まっている。 悟は宏幸に駄目元で電話してみた。 ただ一言、アップルパイは無いか?と。 電話越しでも分かるぐらいに不機嫌なり トーンの下がった声色になったが、説明 すると自分の部屋に取りに来て欲しいと の事。 「宏幸の部屋にアップルパイ取りに 行くか?」 「あるの!?なら行く!!」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加