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電話で葉瑠も行くと伝え電話を切り、
取りに行く事に。夜だと言うのに賑わい
続ける街に魅せられ自然と手を繋いだ。
特に嫌がる様子もなく、寧ろ男と繋ぎ
慣れているかのように振る舞う葉瑠の
横顔に悟の中で例えようの無い感情が
芽生え始めている。
「嫌がらねぇ~の?」
「何で?」
「男に繋がられるの嫌だろ?」
「神田さんは嫌なの?」
「別に……」
まぁいっか。と小さなため息を溢し、
宏幸の部屋に行って土下座し、代わりと
なる皿を一緒に見に行く事を約束した。
「まさか割られるとは思ってはいません
でしたが、より良い物が手に入るなら
構いませんよ」
黒笑みは悟に冷や汗をかかせたが、
葉瑠はレモンパイを堪能していた為
気づく余地もない。
さすが詐欺師(ペテンシ)。
葉瑠の前だけはいい人で居たいと言う
信念をこういった形で貫ける事を悟は
学んだ。
許しを得て、談笑し、帰りにアップル
パイを貰ってそれぞれの部屋に帰った。
次の日の放課後部室に訪れた帝と葉瑠が
手を繋いでいるのを見てしまい、何故、
あの時葉瑠が嫌がらなかったのかの
理由を知る。
成る程これでは嫌がらない筈だ。と
苦笑し、嫌がらせをする気満々で葉瑠に
近づき耳元で囁く。
「昨日は楽しかったよ」
特に何をした訳でもないのに真っ赤に
なる葉瑠を見て帝は悟を敵と見なした。
自分の気持ちに気づいたのは2年の蒸し
暑い日だった。
一大決心をして告白しようとしたが、
その意図を察していたように、逃げる
葉瑠を追いかけられずに終わった。
しかしどうにも諦めがつかず、何かしら
理由をつけ近づけないかと試行錯誤。
時には帝と火花を散らしながら時々
抜け駆けして3人で遊びに行く事に
成功させ、その時間がかけがえの無い
大切なものとなっていった。
愛している。
3年の春を迎えたと言うのにその一言は
まだ言えてはいない。
女遊びをし過ぎた自分の浮わついた
気持ちのままでは受け入れられない。
とも考え、女とは縁を切る事にした。
君の笑顔が、
君の温もりが、
今の自分を導く淡い光。
いつ君に呼び出されても良いように、
暇な時、女と遊ばず、レモンパイの
作り方を宏幸に教わっている事を
君はまだ知らない―――。
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