愛を知るということ

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「何を考えているのですか?」 気がつくと宏幸はベッドの縁に 座っていた。 「別に」 ベッドに寝転がっていた悟は身体を 起こし、宏幸に「おいで」と微笑むと 大人しく腕の中に納まり、後ろから抱き つく形をとった。 「私は、貴方も葉瑠も愛しています。 どちらか何て選べない程に。 それは歪んでいるのでしょうか?」 「さぁな、歪んでるどうかは向けられた 相手が決める事だろうよ」 歪んでいる?そんな事はない。 ただ愛してしまっただけだ。 世界の暗黙の了解を無視して。 誰が造ったかも分からない理の存在に もがき、苦しむなら、いっそうの事…… 「なぁ、俺と堕ちてみない?」 妖艶を浮かべた悟は宏幸を言の葉の鎖で 縛り付ける。 「そうですね。 それもいいかもしれません」 宏幸は嬉しそうに、でも何処か悲しみを 抱いた笑みを見せ、されるがままに唇を 重ねた。 「もう一回付き合え」 手際よく脱がされた制服はベッドから 落とされ、濡れる音、宏幸の喘ぎ声が 鼓膜まで犯す。 「は、早く」 押し倒した途端、ギュッと抱きつかれ、 宏幸が流す涙にキスをしながらとっくに 慣らされた宏幸の身体を貫き絶頂へと 導く。 「ゃ……もぅ……む……り…………」 「じゃ一緒にイこうか」 悟を受け入れての快楽に幸せを感じ、 好き勝手に揺さぶられ、絶頂に達すると 目を閉じた息を整え、そのまま眠りに つこうと宏幸だったのが、悟は満足する 事なく、ニコッと笑いかける。 「……?」 「大丈夫。明日は休みだし」 その綺麗な笑顔に承諾しそうな自分を 振り払い、明日の苦痛を考えると カタカタ震え出す宏幸を悟は夜が明ける まで愛を奏で泣かし続け、目が覚めると 壁時計は昼3時を知らせていた。 「携帯……のバッテリーが……」 手探りで、落とされたズボンの中から 携帯を取り出たが、充電されている筈も なく、うんともすんとも言わない。 「たまにはサボっても良いだろ」 「馬鹿言わないでください。 私には仕事……が……っ!!!!!」 まだ動くなと言わんばかりに 悲鳴を上げる身体に座る事も ままならない。 「俺、ご飯作ろうかな」 「当たり前です!!」 再び布団に潜り込んでウトウト。 そんな宏幸の額にキスをして台所へ 向かった。 次第に良い香りに鼻を擽られ、心待に していた筈なのだが、怠い身体は宏幸に 夢の続きを見せる事にした。 宏幸は夢心地の中で、この幸せがずっと 続きますようにと祈っていた。
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