愛を知るということ

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植木が並ぶ花壇で女子生徒が踞り、 その子を庇うように立つ康介は 服の所々が破れ、血が滲んでいる場所を 手で押さえていた。 柳斗は前方で他校生10人の相手をして いるが、蹴りでは相性が悪いのか大した 威力は見受けられない。 走りながらポケットに両手を入れ ナックルを嵌め、思いっきり踏み込んで 鉄パイプを持ち高みの見物していた人の 背後から回り、背骨粉砕を目指して殴り 付けた。 「ぐはっ……」 皆が一斉に葉瑠に気を取られた瞬間、 柳斗は目の前の敵を蹴り倒しす。 「お前らは退け!!!ここは僕が殺る。」 「しかし!!」 「煩い!!!!!文句なら後で聞く!!!」 袖ボタンや前ボタンを3個開けて威勢を むき出しに声を荒げると容赦無い攻撃が 繰り出される。 それらを受け流しては投げ飛ばし微かに 視界の隅に映った鉄パイプに向かい足を 振り上げ、ブーツに忍ばせた鉄板で蹴り 飛ばした。 「FU~」 楽しそうに殴り込む葉瑠を横目に校舎に 向かっていると、第3運動場に向かう 2人の生徒とすれ違い康介が慌てて声を 掛けたが「知ってるっすよ。」と笑顔を 振り撒きながら去って行く。 その行った先で1人で戦う葉瑠は誰かに 知らせて来るべきだったと後悔。 下っぱが来たのか動作が荒く避けるのは 簡単なんだが、8人が相手ではまさに 四方八方塞がり。 しかも、その矛先のいくつかが校舎に 向いている事には気づき、向かい来る 攻撃を避けながらひたすら走ってたが、 前を走っていた筈の生徒が何故か葉瑠の 上を舞い、すぐ後ろでドサドサッ、と 音をたてて次々に落ちてきた。 「あっ居た居た。帝先輩に言われて 迎えに来たっすよ、葉瑠先輩」 飛んできた方を見ると嵐山高等部1年、 喧嘩部部員河島朔と陣川ミナトは幼き 子を迎えるように大きく手を振ってた。 「あぁ!!陣川さん!!河島さん!!」 再会に抱きつこうとした葉瑠の背を ミナトは優しく包んで自分達が歩いて 来た方へ行くように促す。 「ここは、専門に任せて医務室行って ください」 こちらに向かって走ってくる3人を待ち 構えるように立ち、互いに背で語る。 「有り難う!!今度奢るね、響さんが!!」 「ははっ、先輩らしいや。さぁ走れ!!」 「はーい!!」 「悪いけど、ここは通さないっすよ」 誰かの悲鳴を聞きながらも安心して 走った。向かうは高等部医務室。
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