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「起立、礼」
授業終了を告げるチャイムの音と、クラス委員の号令。
今日は1学期終業式。
夏休みの過ごし方をウダウダ話されるロングホームルームも終わり、クラスは解放感に満ち溢れていた。
みんながテンション高く騒いでいる中、ひとりいつものように大きく伸びをする俺、七瀬煌輝。高校3年生。
伸びをしたあとはいつものように帰りの支度を早く済ませる。そう、“ヤツ”を迎えに行くために。
カバンに必要なものを詰め込んで肩にかけたとき、
「煌輝―――――――っ!!!!」
バカみたいにデカい声で呼ばれた。
いや、バカみたいではなく正真正銘、バカなのだ。
この狭い教室でわざわざ呼びに来ず、デカい声で他人を呼ぶヤツなんて、俺の知る限りひとりしかいない……。
眉間にシワを寄せ振り返った先にいたのは同じクラスの高橋里奈。
「要ちゃんがお迎えにきったよー!」
ドアの前に立っていた無防備すぎる“ヤツ”に抱きつきながら俺を呼ぶ高橋。
俺はあの光景を見るたび、高橋に殺意的なものを抱き、心の中で、
“いつか絶対ぶっ飛ばす!”
そう誓うのだ。
眉間にシワを寄せたままズカズカと歩み寄ると、俺はヤツの腕を思い切り引っ張って高橋から引き剥がし、自分の方に抱き寄せる。
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