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「ねぇ、玄渦くん! ほらほら、風が気持ちいいよ?」
色とりどりのペンライトがあまねく夜空の下、少女は住宅街を駆け巡る。まるで踊るようにして揺らぐ姿は、さながら天女のようだ。
腰まで垂らす自慢の黒髪を靡かせると、煌めく月下に好意的な笑みを称えて振り返る。
「ほら、玄渦くんっ!」
「夜中だし、静かにした方がいいんじゃないかな……?」
「もうっ! つまんないなぁ」
「はわぁあ……」
はしゃぎ回る彼女はぷいっと顔を背けると、あくびに涙を滲ませる玄渦最斗(くろかさいと)を置いて灰色の路面を飛び跳ねていった。
「危ないぞー」
注意をしたとしても聞き入れない彼女は悠楊と応える。
「だったら止めてくださらない? 玄渦くんは私のナイトなんでしょ?」
「まったく……わがままな」
月明かりに映える絹のように滑らかで白い肌が、スキップのリズムに合わせて揺れる黒に染まる。
いつまでも続く街灯のシンメトリーが招くように点滅を繰り返す。これから始まる宴へ招待するようにして。
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