序章

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    「玄渦くんっ! もうすぐ始まるよ」  蛍光灯が完全に切れた街灯の下でやっと止まった少女は、振り返り様にもう一度言った。 「玄渦くんっ!」 「もう少し声のトーン下げなよ! ご近所さんに迷惑だろ?」 「……玄渦くんが私のこと捕まえてくれないからいけないんじゃない」  彼女はスカートを翻して一回転する。  慌てて走る最斗を尻目に、純白の秘部を露にした。 「やめろバカッ!」 「きゃあっ!! 玄渦くんにスカート掴まれたっ! はぁ……もう私、お嫁にいけない……」  涙を拭うまねをして、落ち込む様子を見せる。 「大丈夫……?」 「ううん」  と、少女は不敵な笑みを浮かべ、いつになく心配してくれた最斗の腕を絡め取った。 「だから私を貰ってね?」 「……またそういうこと言う」 「もう、つれないんだからっ」  触れたら穢れてしまいそうな朱に染まる頬を膨らませて、少女は恥ずかしそうに言った。 「それでも……ずーっと待ってる。玄渦くんが振り向いてくれるまで、ずっと。だから──最後には私を貰ってね?」    いつまでも続けばいいのにと、今この時だけの幸せを噛み締めながら言の葉に未来を託し、少女は夜空を見上げた。  
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