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「というかな、兄ちゃんと同じ高校受験するやつがいるかバカめ」
「あー! お母さん言ってたよ? お兄ちゃんってば、何であんなに不精になってしまったのかしらって」
「そんな母の言うことを気にするな。藍那の兄ちゃんなのは変わらないだろ?」
いつもは結わない胸元まである紺色の髪を、今日に限っては右肩から一つに結って垂らしていた。こういう時は意外に気合いを入れてきたということは統計が取れている。
「でも……」
と、渋る様子を見せたからには間違いなかった。今日は本当に学校に連れていきたいらしい。
「明日は行ってやる」
「明日は創立記念日でお休みだよ……?」
引きこもりはすぐに引き下がらないのが基本能力。
しかし、学校に行ってないデメリットは何となく大きいなと、最斗は苦笑いを浮かべた。
「じゃあ明後日なら」
「明後日は日直だから早く行かないといけなくて……」
「頑張ってんなぁ藍那は」
打つ手なしか。
そう理解した最斗は、こっちにおいでと藍那に手招きをした。
「なに……?」
と、最斗の横に不満そうに座る藍那。「 時間ないんだよ?」と時計を見るが、隣の引きこもりは違っていた。
「今日も頑張ってこいよ?」
「んっ……もうっ、お兄ちゃんってば……」
できるだけ優しく抱きしめる。ついでに頭も撫でながら。髪を留めているヘアピンが時々引っ掛かるが気にはしない。
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