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虚栄心の塊でしかなかった二年生までの自分は、ほとんどが命令を下す側で、人に任せることで自由と栄華を得ていた。
春休み。
進級間近になったこの頃、藍那が一向に教えようとしなかった進学先が、私立阿万白(あましろ)高等学校──自分が現在通っている高校だと聞かされた。
「なぁなぁ。知ってるか最斗! お前の妹、また男に囲まれてたぞ?」
それからは彼女の話題が尽きない。
友人、楔恒樹(くさびこうき)に関して言えば、朝からうるさいぐらいに言い寄ってくる。
「やめてくれ。毎回そういう不安にさせるようなことを言って僕で遊ぶとか、趣味悪いよ楔」
「だってよー、最斗だからこそ知りたいだろうに。なんかよくわからない異常なモテ方してる妹のことなんて特に」
「そりゃそうだけど……何ていうか、妹だからこそ知りたくないっていうか。まぁ知らないで居たら、藍那が泣いて帰ってきたら後悔はするだろうけど」
「やっぱり知りたいんじゃないか」
やれやれといったようにため息をつくと、楔は最斗の肩に腕を回す。
「実際、好きな人居るらしいけどな」
「はぁぁ!?」
「おいおい……」
瞬間、教室中の視線を集める。
そんな。そんなことってあり得るのか。今まで見てきた藍那を思い出しながら、今朝の藍那を振り返る。
「……だから学校は来たくないんだよ。楔とか楔とか楔とか要らない情報流すやつがいるから」
「それ俺だけじゃね?」
「何か間違えた?」
「あぁ。本気なのね最斗……意外にショック受けるんだからな!」
「自分で意外言うな。白々しく聞こえる」
最斗はそれだけ言うと、机に突っ伏した。
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