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「カスミ。総司を渡せ」 こんな光景を以前にも見たことがある気がする。無くした記憶ではなくて、ほんの数ヶ月前に。その時とは、後ろと前の人物の立ち位置は違っていたし、それから──。 「……ぶっ」 「笑ったら可哀想ですよ。カスミさん」 あなたのせいですよ。沖田さん。 「笑ったな……」 はっ!!殺気が!! 「おっ落ち着いて下さい土方さん。先ずは顔を」 「トッぶっ……その顔」 土方さんの顔を見た近藤さんは、お腹を抱え、笑うのを必死に堪えていた。 「相手を油断させる、新しい戦法ですね」 土方さんの顔を見た源さんは、腕組みをして頷いていた。 「んなわけねぇだろぅがぁ!!」 「まぁるっと」 土方さんが怒りを向けるべく相手に、顔を向けた時。唯一何も書かれていない方の頬に、沖田さんが円を書いた。 「私、絵の才能があるみたいです」 確かにキレイに円は書かれているけど。それだけで絵の才能があると言えるなら。 「それぐらい、私にだって書けますよ」 「では。どうぞ」 筆を渡され、円の中に小さな円を書く。 「ねっ」 「……おいっ」 ──。 「カスミさん。逃げますよ」 「あっ待って下さっグェッ」
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