314人が本棚に入れています
本棚に追加
私を置いていく沖田さんを追いかけようと、立ち上がり走り出そうと──腰に縄が巻かれていたことを、すっかり忘れていた。
「行かせはしないぞ」
そして、縄の先を近藤さんが握っていたのを忘れていた。縄を引っ張られたようで、お腹に少し苦しみを持ちながら、近藤さんの膝の上に座っていた。
「でも。ほら。あれ」
あれは、顔を伏せ体を震えさせ。
「…司…司。総司!!」
良かった。土方さんの狙いは、沖田さんだけみたい。
「カスミ。そこを動くなよ」
じゃないみたいです。疾風のごとき速さで、部屋を出て行った。動きたかった。逃げて隠れたかったけど。この状況じゃ無理だろうな。まぁ、近藤さんが何とかしてくれるかな。って他力本願な事を考えていた。
「私は仕事に戻りますね」
「源さん!!」
部屋を出ようとした彼を呼び止めた。
「カスミさんも色々と大変だったのでしょ。今はゆっくりして下さい」
「ありがとうございます。それからっ」
本当は謝罪もしなければならないのに。源さんの笑顔を見たら、その先の言葉を止められた気がした。
障子が閉められ。部屋には近藤さんと二人きり。
「あっ!!すみません」
膝の上に座っていたのを忘れていた。下りようとした私の腰に腕が回され。
「構わん。構わん」
浮いた体がまた膝の上に。
最初のコメントを投稿しよう!