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私を置いていく沖田さんを追いかけようと、立ち上がり走り出そうと──腰に縄が巻かれていたことを、すっかり忘れていた。 「行かせはしないぞ」 そして、縄の先を近藤さんが握っていたのを忘れていた。縄を引っ張られたようで、お腹に少し苦しみを持ちながら、近藤さんの膝の上に座っていた。 「でも。ほら。あれ」 あれは、顔を伏せ体を震えさせ。 「…司…司。総司!!」 良かった。土方さんの狙いは、沖田さんだけみたい。 「カスミ。そこを動くなよ」 じゃないみたいです。疾風のごとき速さで、部屋を出て行った。動きたかった。逃げて隠れたかったけど。この状況じゃ無理だろうな。まぁ、近藤さんが何とかしてくれるかな。って他力本願な事を考えていた。 「私は仕事に戻りますね」 「源さん!!」 部屋を出ようとした彼を呼び止めた。 「カスミさんも色々と大変だったのでしょ。今はゆっくりして下さい」 「ありがとうございます。それからっ」 本当は謝罪もしなければならないのに。源さんの笑顔を見たら、その先の言葉を止められた気がした。 障子が閉められ。部屋には近藤さんと二人きり。 「あっ!!すみません」 膝の上に座っていたのを忘れていた。下りようとした私の腰に腕が回され。 「構わん。構わん」 浮いた体がまた膝の上に。
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