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「さて。先ずは何から聞こうかな?カスミさんは、何から聞いてほしい?」
頭の上で、近藤さんの優しい声がする。
『戻ってきてくれた。私はそれだけで嬉しいんだよ』
「何でも聞いて下さい」
「そうか。では……おかえり」
思いもよらない言葉に驚き、体ごと横を向き、近藤さんの顔を見るために視線を向けた。
「カスミさんが帰ってきたら、誰よりも先に言いたかった言葉なんだ」
少し照れながら、言えたことに満足したような顔をする近藤さんに。知られてはいけない。先に沖田さんに言われた、などとは。
「トシのしたこと。許してやってくれないか?……本当は誰も、トシもあんなことしたくはなかったんだ」
「許すも何も。私が悪い……んですよね?」
今でも、土方さんがしたことの意味が分からなかった。だから、尋ねてみたら。困ったような、悲しい顔をされた。
「カスミさんは何も悪くない」
「たっく。近藤さんはカスミに甘いんだよ。だからオレが……」
部屋に戻ってきた土方さんが、何かを言いかけて止めた。
「トシ。落としてしまったのか、勿体無い」
「なっ……」
顔の落書きが消えた土方さん。言いかけてたのを止められると、気になってしまう。でも、それより気にしなければならないことがあった。けど、顔を洗って人に戻ったのか、私に何もせず。私達の前に腰を下ろした。
「それで?」
私の後ろに居る人に視線を向ける。
「まだ何も」
土方さんから溜め息がこぼれた。こうなることを予想していたように。
「なら。オレが聞く」
私に視線が向けられた。
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