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「声が……聞こえたから」
「声とは?」
土方さんは、声の事を近藤さんには言ってなかったみたいで。知らないようだった。知られてはいけない。
「話せ」
ことでもないようだ。
「耳から聞こえるのとは違って、頭の中で聞こえる声があるんです。その声が、忘れている過去を思い出させるかのように。最初に聞こえたのは、花見の時です」
「私の肩を掴んだ時か?」
「近藤さんの声が聞こえたから」
「その後も聞こえるのか?」
「たまにですが」
「あいつらと居た時も聞こえたと言ったな」
頬杖を止めた土方さんが腕組みをする。やはり視線は外さない。
「聞こえました。二人の声が。だから聞いたんです。以前にも会ったことがあるか。でも、何も分からなかった」
「向こうから何か聞かれたことは?」
「ありません。桂さんは聞きたいことがあるって言ってたけど。結局最後まで何も聞かれませんでした」
聞きたいことを聞き終えたのか、近藤さんも腕組みをして。二人が考え込み始めた。
「あのぉ」
考え中を邪魔をしてしまうが、私にも聞きたいことがあった。
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