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「高杉さん達って何者なんですか?」 近藤さんの顔を見ると目を見開き固まっている。土方さんは口を開けたまま固まっている。 「カスミさんは、二人が何処の者か知らないのか!?」 固まっていた時間の瞬きを取り戻すかのように、近藤さんの瞼が休むことなく上下に動き。また動きを止めた。 「知ってたら聞いてませよ」 「自分で間者じゃねぇって言っただろうが!!」 開けっ放しだった口を動かし叫んだ声が、耳を貫く。 「それは……声が聞こえたから」 「また声かよ」 私にしか聞こえない“声“に少し苛ついている。 「あっそれから。間者ってなんですか?」 「おまっ……意味分からずに言ってたのか!?」 片手をついて身を乗り出した土方さんから逃れるように、体を引いても。後ろに近藤さんが居るわけで。この行動に意味は無かった。 「だから声が……」 「オレが信じたかどうか聞いたら、分からねぇって」 「それは。間者が何か分からないから。土方さんが何を信じたのか分からないって意味で」 「……近藤さん。オレはもうダメだ」 乗り出した体を引っ込めて、力無くその場に横たわった。勿論顔を私達の方に向けて。 「トシを腑抜けにさせるとは、カスミさんは徒者じゃないな。だが、安心したよ。私はカスミさんが嘘を言っているようには思えないのだが。トシはどうだ?」 「こいつはただの馬鹿だ」 「ばっ!!」 今度は私が身を乗り出そうとしたけど、その行動は近藤さんの腕によって呆気なく止められた。 「そんなことを言うな。カスミさんが居なくなって、一番心配してたのはトシだろ」 「……。一番狼狽えてたのはどこのどいつだよ」 「私だ!!」 胸を張って、自信満々に答え声に。土方さんの口から、深い深い溜め息が吐かれた。
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