314人が本棚に入れています
本棚に追加
「トシはな」
視線を一度土方さんに向け、私を見た。
「トシは。カスミさんを信じたかったと思う。と言うより、信じていた」
本人が信じていないと言った後に、言われても。説得力が無いわけで。首を傾げた。
「本来なら局長である私が、カスミさんの事を一番に疑わなければならない立場なんだが。まぁ知っての通り、なぁ」
同意を求めないで下さい。縄で繋がれてる時点で充分信じてもらえてないって思いますけど。
でも。狼狽えていたって言うのを、自信満々で自分だって答えてたのを思い出すと。近藤さんの気持ちが伝わってくる。土方さんが溜め息つくのもなんとなく納得。
「私だけじゃない。皆もカスミさんを疑うことなんて出来なかった」
何時からか止まっていたのか、手が三度動き、近藤さんの手が髪にそって上から下へ流れていく。それが心地良くて、近藤さんの肩に頭を預けた。
「だがな……誰かが疑わなければならなかった。記憶が無いこと、私達を知らないと言うことを。それをトシが、一人でしたんだ。トシ一人に背負わせてしまった」
ただでさえ小さい声が、消えていくようだった。近藤さんに、土方さんに辛い思いをさせてしまったのは、させているのは私。
指を絡ませ握っている手に力が入る。
最初のコメントを投稿しよう!