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「山崎がカスミさんの居所を掴んだ時。不確かなものが確信に変わろうとしていた」
握り締めていた手を、大きな手が包み込んでくる。ゆっくりと優しく、絡まる指が解かれていった。二度と絡まないように、温かい手が片手を拘束する。
「そして私はまた……トシに背負わせてしまったんだ」
“トシもあんなことしたくはなかったんだ“
「近藤さん。……泣かないで下さい」
空いた手で流れ落ちてくる涙を拭った。
「すまない。またトシに怒られてしまうな」
笑っても流れを止めない涙。
土方さんにも流させてしまったそれは、私のせい。私が記憶を無くさなければ、私が現れなければ。
私の──せい。
私の──。
「カスミさん!?」
「……っ。カスミ!!」
眠っていたはずの土方さんの声が聞こえてきた。急激に襲ってきた頭痛に耐えきれず、近藤さんの膝の上から崩れ落ちていく体を誰かが支えてくれた。
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