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「カスミさん……」
「カスミ……」
大丈夫だから。大丈夫。ただの頭痛。だから。そんな顔しないで下さい。
──。膝の上に柔らかい重みを感じ視線を落とした。
「……ユ……キ」
猫も泣くんだ。もしかしたら、どこかで濡れた水滴なのかもしれない。それが丁度、ユキの目の下で。泣いているみたいだった。
大丈夫だよ。だから泣かないで。
片手を土方さんの腕から離して、ユキの濡れた頬を拭ってやった。手の平に頬をスリ寄せてきて、一本。小指を舐めてきた。ザラザラした舌の感触。次は隣の指。次へ次へ。
ユキ?
「カスミ?」
私の異変に土方さんが気付き、顔を覗いてきた。
「もう。大丈夫です」
その言葉に安心したように吐いた息が耳を擽る。心配させない為についた嘘ではなく、しかめていた顔も元に戻っていた。掴んだ手に力は無い。頭の痛みも治まっていた。
「大丈夫なのか?」
「はい」
近藤さんに笑顔を向けると、眉間に寄った皺が消えていく。
ユキが指を舐めることを止めはしなかった。
「ユキ。ありがとう」
ようやく舌の動きを止め、膝に乗っていた前足を進め体を乗せて丸まり。頭を撫でてやると気持ちよさそうに目を細めて、眠りついた。
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