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「カスミ」
何時の間にか伏せていた顔を上げると、土方さんは口から白い煙を吐き出していた。
「あいつらがお前をさらった理由は、大方オレ達の情報を聞き出す為だ。仲間ならさらったりせず、何かやりとりをすれば済むだろ」
「でもっ」
「最後まで話しを聞け。お前のことだ、あいつらに声の事記憶の事話したんだろ?もし仲間なら思い出させるために自分達の素性を話して聞かせたはず。しかしお前は奴らが何者なのか知らなかった。ここに戻した理由に何の意図があるか分からねぇが、オレはお前があいつらの仲間だとは思わない」
言い切る言葉。その言葉を素直に聞き入れられない自分がいた。
土方さんが私を斬らなかったことがみんなの答えだと言った沖田さん。その答えとは、私が仲間ではないと言うことか。私が嘘を言ってないと思ってくれた近藤さん。勿論嘘など言ってはいないし、話しを聞いて導き出した答えに自信があるからこそ、土方さんも言い切ることができたのだろうし。
それでも答えのでない。出すことの出来ないモノが私を掻き乱す。
「声のことは考えたって無駄だ。ひっかかってんだろ、あいつらの声が聞こえたことが」
「な、んで……」
見透かされている。
右口角を軽く上げ、私を凝視するその目から逃れることは許されないと感じた。
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