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さっきだってそうだ。何も言っていないのに、聞いていないのに。土方さんは、私が欲しい答えをくれた。
「言っておくが。声に関してはオレにも分からねぇからな。カスミにしか聞こえない声に何の意味があるかも分からねぇ。その声が何を伝えたいのか、何を思い出してほしいのか。だから今は考えるな。そのうち分かるさ。お前がここに居る理由も」
怖い。──何が?自分の内側を見透かされて、掻き乱すモノを落ち着かせてくれる、土方さんの声が?何故?
分からない。
怖くて怖くて仕方ないのに。知られたくない、知ってほしい。見られたくない、見てほしい。
矛盾した気持ちを落ち着かせるために、息を深く吸い込み、その全てを吐き出した。
「カスミ」
見るな。見てはいけない。その目を見れば、奥深くを覗かれる。
「……はい」
逸らせない。逃れられない。一度捉えられたら逃げ場なんて無いのに。
「いや。いい」
最後の煙を吐き出し終わると、また文机に向かい筆を走らせ始めた。
分からない。
私には土方さんの目の奥にあるものが。
何も分からない。
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