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「……さん」 声のことを考えるなと言われてから数日。 あれから声は聞こえてこないけど。それはそれでまた考えてしまう。 考えても考えても堂堂巡りなだけで。それでもまた考えて。 「分からない」 こんな独り言と溜め息が増えてきた。 「美味しくなかったですか?」 「へっ?……いえ。美味しいです」 泣きそうな顔をする沖田さんに慌てて、爪楊枝に刺したままの羊羹を口に頬張り、もう一度“美味しいです“と、笑いかけると笑顔を返してくれた。 端から見ればいつものおやつの時間だけれど。いつもと違うのは、二人を繋ぐ縄ってことぐらい。 流石にいいかなっと思って縄を解いて屯所内を出歩いていると源さんに見つかり。強制収容。それならばと、縄を繋げたまま土方さんを引きずり出歩いていると近藤さんに見つかり。またまた強制収容。 兎に角。必要外の出歩き禁止と言う訳の分からない局長命令を未だに解除してもらえない。 やはり溜め息が零れてしまう。
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