5/17
312人が本棚に入れています
本棚に追加
/150ページ
カスミの願いも虚しく。二人が広間へ一歩入り込んできた。向かう先は、悲しいかなカスミの方へと。 そうか。これは夢だ。体を斜めに傾け、原田に一撃を喰らわせようとしている今。全てが夢なのだ。 「斉藤さんは足をお願いします」 思考に入ってきたのは、沖田の声だった。 斉藤が原田の膝の裏に手を入れ、沖田は脇に滑り込ませ体を持ち上げた。そのまま二人は広間を出て行こうとしていた。 今だ。 二人が背中を向けた隙に、カスミは素早く体勢を直した。 素早くと言っても、やはり優先されるのはユキである。このような体勢になるよろしくその動きはゆっくりと言えるものだった。 「せ~の」 左足右足と戻す合間に掛け声が聞こえてきた。そして何か重たい者が庭へと放り投げられる音と、不可解な呻き声。 沖田と斉藤が平然とした顔つきで広間に戻ってきたので、カスミも一切気にすることは無かった。たとえ投げ出されたのが原田だと分かっていても。 二人は何事も無かったかのように、それぞれカスミの両隣に寝転んだ。右に沖田、左に斉藤。カスミも何事も無かったかのようにまた目を閉じた。睡魔は既に姿を眩ませていたが、二人に先程のことを聞かれるのが嫌なので目を閉じただけだった。 その一人。斉藤は睡魔と仲良く眠りについていた。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!