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夏の暑さも落ち着き、秋を招き入れようとしている今日。障子が開け放たれた広間に眠気を誘う風が通り抜けていく。 この状況で睡魔が訪れるのに時間はかからなかった。 「心地良い風ですね」 そう思ったのは沖田だけではなかった。 「はい」 その後。広間からは三人と一匹の寝息が聞こえてくるだけだった。 『ありがとうございます』 夢とは如何なる時に見ることができるのだろうか。自分が見たい時に見れるものなのか。未来を暗示するものか、過去を示唆するものか。或いは願望か欲望か。 カスミは今まで探求したことなど無かった。否、無かったのではなく忘れているだけ──なのかもしれない。それを確かめる術を持ち合わせては居ないが。 沖田に抱き締められた日から幾度も見る夢があった。場所も時期も経緯も分からない。あの日と同じ、沖田に抱き締められ、違うのは謝罪の言葉ではなく謝礼の言葉。 それは昼寝から目覚めようとしていた今も。 「……また」 その夢は、夢ではなく過去に起きたことではないかと思った。そう思いたかった。夢なのだから直接脳内を刺激するものなのかもしれない。それでも“声“と同じ気がした。カスミにとって“声“は過去を示唆するものではないかと考えた。 自分に足りないものは記憶なのだから、必然的にそうなってしまうのは否めないのだ。
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