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「沖田さん。何処まで行くんですか?」
みんなの姿が豆粒のように、小さく見える場所まで歩いてきた
「何処まで行きましょうか?」
私が聞いてるんですけど
「沖田さん」
私が立ち止まると、手で繋がる彼も止まる
「あの、一人で行きたい場所があるんですけど…」
「?どこです?」
何処ではないし、場所もないけど
ただ一人で歩きたかった
「私も一緒に行きます」
『一緒に行きます』
「とりあえず、手を離してもらえませんか?」
こうなったら隙をついて
「うぅぅぅん。駄目ですね」
掌を握る沖田さんの指が動き
指と指が絡まる
「カスミさん。何処へ行くつもりなんですか?」
沖田さんが寂しそうに私を見る
「今、この手を離したら。あなたが戻って来ないような気がするんです」
私も戻らないような気がしていた
「だから。絶対に離しません」
本当はこんなふうに
離してほしくないって
離れたくないって
思うのはなぜだろうか
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