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「…ない」
「昨日風、強かったからね」
全て散ってしまっていた
「あれ一じゃない?」
私達が進む先
大きな桜の木の下に人がいた
あの威圧感は紛れもなく斉藤さん
「何してんの?」
あの日のように、木に体を預けて座っていた斉藤さんが、藤堂さんの呼びかけにより、彼ではなく私を見た
何も言わず、立ち上がると。私達が来た道を歩いて行く
やっぱり怒ってるかも
謝らないと
「カスミちゃん見た?」
見ました
「一の袖、膨らんでたよね」
袖?
「きっと入ってるよ。僕と同じ物」
同じ物?…手拭い!?
もしかして、私がまたここに来て泣くかもしれないから、待っててくれたの!?
怒ってるんじゃなくて、藤堂さんがいたから帰っただけ!?
「はい。どうぞ」
「…これは。二人の優しさが嬉しくて、流れてくるものだから…だから、このままでいいんです」
何も聞こえてはこなかった
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