第二章 呪いを促す「存在」

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「はぁ……」  登校中にふとため息が漏れた。理由ははっきりしている。昨夜の出来事だ。  「また……やってしまった……」 そうは言うものの、この現象は自分の意思によるものではない。気づいたらあの光景を作ってしまっていたのだから。  「もう…嫌……」  幼いころからそうだった。私の身に何かあると、何かしら周りに影響を与える。昨夜のようなことはもちろん、車に轢かれそうになった時や騒動に巻き込まれる時など、 私の生きてきた中で、思い返せば大怪我をする前兆はいくらでもあったのに、そのどれもが回避されているのだ。一見とても運がいい、恵まれている と思われるが、この現象をそれらの言葉で楽観視できるほど、私は図太い性格をしていなかった。そして何よりも恐ろしいのが、    (私の記憶に残らない)    私を何より苦しめているのがこのことだった。何かをした記憶もないのに、気づけば事が終わっている。逆に言えば自分の意思に関係なく、無意識に体だけが 動いていると言うことだ。理解不能なこの現象は恐怖以外の何物でもない。だからこそ、   (物事すべてを一人でこなさなければ)  周りに被害を与えないためには、人を避けて生活する他ない。つらくはあったが、他人を巻き込む方がもっとつらい。そのため、しかたないと割り切るしかなかった。 だって私は……      「呪われているのだから……」
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