黄昏

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僕がこの街で迷い猫になって、もうこの冬で二年が経った。 迷い猫は凪子という名の女王に『レン』と名前を貰い、獣たちの玩具になった。 即ちコールボーイ。 165センチしかない身長と華奢な骨格、無駄に大きい目と長い睫―― その全てがコンプレックスだった。 僕は気付いた時には既にゲイだったけれど、別に女になりたいわけでも女の様な身体に産まれたかった訳でもない。 『可愛いよレン。』 『レンはミニスカートがよく似合う。』 クライアントの言葉はどれもコンプレックスを刺激するだけで、獣たちに弄ばれれば弄ばれただけ、劣等感だけが増していく。 それでも辞めずに此処まできたのは、大嫌いな自分を虐めているのと、拾ってくれた凪子さんへの恩義だろうか―― いやそれだけじゃない…… 心では分かってるけど、頭が分からないフリをしているだけ――
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