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気が付けばHR(ホームルーム)は終わっていて、机には大量のプリントが散乱していた。皐月はそれらを確認もせず全て鞄に押し込むと、無意識の内に立ち上がった。
『気を付け、礼!』
はきはきとした朝倉の声が響き渡る。
(あ……もう下校なのか)
皐月はこの時やっと意識を取り戻した。しかしまだはっきりとしたものではなく、後ろから自分を呼ぶ何者かの声が認識できない。
「皐月ってば!」
声の主は由実であった。痺れを切らせて大声で叫んだところで振り返ってみると、自分の席が遥か彼方に存在する。
じゃあ、今自分はどこに……
「皐月ぃー、あんたやっぱり彼のこと気になるんじゃない!」
どこにいたのかは、言うまでもない。
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