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「そんなこと、ないわよ」
この言葉に何の説得力も無いことは皐月自身もよく分かっていた。
これは由実に対する言葉ではない。空の席に想いを馳せる自分への言葉である。
「あれ、ロジャーさん帰っちゃったのかな?」
からかうような、由実の無神経な一言。
「……そうじゃない?」
友人は知らないだろう。今、この高本皐月がどれだけ不安定な状態なのか。
「じゃあ私達も帰ろっか」
着々と進む会話。
それを妨げる気も起きず、皐月は上の空のまま帰路に着く。
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