Can't take my eyes off of you

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「ねえ皐月、このバス私達以外に人乗ってないけど大丈夫かな?」 早帰りであるこの時間帯なら一般客がいないのは分かるが、自分達と同じ境遇の学生すらいないのはおかしい。由実の質問は至極まっとうな常識にそったものであった。 「さあ……」 だが皐月はそれを軽く受け流しながら運転席の方へ駆けていく。その常識が彼女にはお気に召さなかったのだ。今、彼女は常識より非常識を強く求めているのだ。 言うなれば欲求不満。皐月自身も今の自分が壊れているのは自覚していた。だが自覚したところで止められない、止まらない、どうしようもない。 「運転手さん、このバスは何処行きでしたっけ?」 「さあね。でも気分が沈んだ時は、とにかくブッ飛ぶのが一番さ!」 全くその通りだと皐月は思った。 だが、自分が何故沈んでいるのかまでは永遠に理解できまいとも思っていた。
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