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(……自業自得ね)
それが皐月の親友に抱いた感想であった。
由実がこんなにも怖がっているのはトゥーンとしてのロジャーを受け入れなかったから。ロジャーの言葉を自分の都合よく解釈して信じることができなかったから。
確かに由実にはロジャーの正体をしるチャンスがあったが、これは怯える友人に対する言葉としては余りにも辛辣なものである。しかし、皐月には自分の欲望を抑えることができなかった。
友人を卑下することによって、自分は更にロジャーへ近付いたと言う錯覚。自業自得と言いながらも真実を教えるつもりは更々ないと言う矛盾した心理。だがこれが興奮する。胸が高鳴る。アドレナリンが溢れ出す。
「まもなく終点でございます!」
アナウンスと共にバスがこれまでにない程大きく揺れ、皐月の意識は赤と白のフラッシュに飲み込まれた。
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