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「う……ん……」
皐月は芝生の上で目を覚ました。辺りを見回すと、大破したバスが寝転がって穏やかな寝息と共に黒煙を吹き上げている。
フロントガラスが割れているところを見ると、恐らくクラッシュした拍子に窓から飛び出して気絶してしまったのだろう。
「あ……」
その時、夢心地で浮きに浮いた皐月の精神が冷や水を浴びせられたかのようにいきなり元に戻った。
自分の隣には、バスなんかよりも断然近くに由実が倒れていたのだ。
無傷な皐月と違い、彼女の身体は所々に黒い煤汚れがあり、膝付近の腿にはガラスで切ったと思われる傷があった。
その余りにもリアルな光景が、皐月の正気を取り戻させたのである。
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