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幼なじみのとしあきは、僕と同じ大学生だ。 としあきは県外の大学を受けて、数ヶ月前から一人暮らしをしていた。 4月も中ごろからとしあきはホームシックにかかったみたいで、都会の水が合わないだの何だの、愚痴を零していた。 学校に慣れ初めた初夏の頃、僕は一度だけとしあきの家に遊びに行った。 そのとき、としあきは一人暮らしをする前のように元気だった。 携帯をしきりにいじっていたのが印象的で、彼女でもできたのかなぁと少し先を越されて悔しくなったのを覚えている。 そして2ヶ月、としあきからの連絡がなくなった。 なくなるだけならまだいい。 携帯電話自体に通じない。 解約はありえないし、機種を変更したとしても連絡くらいはあるはずだ。 それどころかとしあきの性格なら新機種を自慢しまくるはずだから、連絡が途切れるなんて、よっぽどだろう。 僕はボタンを連打して通話を切りながら、財布を掴んで飛び出した。
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