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出てこないなら仕方ない、探すしかない。
クローゼットは開きっぱなしで詰め込みきれなかった物がはみ出しているから、隠れられるわけもない。
ユニットバスの風呂場は長い間使われていないようで乾いており、トイレは掃除されておらずすごい色だ。
二部屋しかないのだから隠れる場所は限られる。
それなのに、としあきはいない。
というより、ずいぶん長い間留守にしているような…そんな雰囲気だ。
部屋に戻った僕は、ふと床を埋めるレシートの山が気になった。
一枚を拾ってみる。
レシートだと思っていたが、チケットと言った方が近い。
横書きの列のはじめにあるに文字には少し見覚えがあった。
WebCash (ウェブキャッシュ)
たしか、ネットで使える通貨みたいなものだ。
としあき、通販でもしてたのか?
そこらへんの紙を一枚一枚拾い、読んでいく。
払い込み票、代金受理票…どれもウェブキャッシュだ。
金額も、5月には1000円だったのが3000円、5000円…最終的には10000円をひと月に何度も払っている。
「なんだよこれ…」
額がありえない。
部屋には物が増えた様子なんてないのに。
僕はちらっと机の上のカップ焼きそばの容器を見た。
せいぜい5つ6つしかない。
としあきはまともに食事をとっていたのだろうか?
探っていたら、紙の山から堅いものが出てきた。
としあきの携帯だ。
電源が切れていて起動しない。
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