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「たべていけなくなった、おとーさんと、おかーさんは、ヘンゼルと、グレーテルを、もりに、すてることに、しました。」
何の感情もこもらない、飢えて乾いた娘の声がした。
真由美は、うっすらと思い出した。
放っておかれた妹に、数少ない絵本を同じく一人ぼっちの兄が読んで聞かせていた。
同じ本を何度も何度も。
新しい絵本など、買ってもらえなかったから。
「ヘンゼルと、グレーテルは、おかしのおうちに、たどりつきました。でも、そこは、まじょの、おうちだったのです。」
台所で、グツグツ、ゴボゴボと音がした。
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