――あの曇りの日から――

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――あの曇りの日から――

「さっさと立たんかコラァ!!」 暴力的な声と共に学校の制服姿の少年は胸ぐらを掴まれて再び男から殴られた。 (何で俺こんなめにあってんだっけ?) 時間はさかのぼる…… 朝、妹を家から見送ると少年は急いで家を出た。 短めの赤毛混じりの茶色い髪、同じく茶色の瞳の目は今は不機嫌そうに細められている。 (毎日忙しいなぁまったく……) 走りながら空を見上げた。曇っている……。どんより雲がたちこめていて雨が降るかもしれない。 (そういえば傘持ってきてねーし……まあいっか) その時だった。肩に衝撃。上を見上げていたせいで誰かとぶつかってしまったようだ。 「あぁ、すみません」 すぐに謝った。しかし…… 「うわ~メチャクチャ痛え~」 「てめえどこ見て歩いてんだぁ?あぁ!?」 ぶつかったのはチンピラだった……。 (マジかよ~こんな時間でもいるんだああいう奴ら……) 少年はそう思いながらいつでも逃げられるよう準備した。 「あ~、もしかしたら骨折れたかも」「てめえ、どうしてくれんだあぁ!?金払えや!!」 ここぞとばかりに金をせびってくるチンピラ。 (イヤイヤ折れねえだろ!どうしてくれんだって……聞いたくせに自分で答えてるし!!!) ……ダメだ、妹が遅れたせいでイラついてる……。
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