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そして帰ってくるなり奴は言った。
「とりあえずメアド聞いとけ」
ごもっともです。はい。
差し入れに持ってきた炭酸ジュースを開けながら、やれやれとでも言い出しそうな表情をする。
「まだ身近に初々しい奴いたんだな~」
「さ、さーせん。」
「普段はもっと騒ぐ奴が恋愛に対してネガティブじゃ世話ねーや」
「ぐぐぐ…」
当たっているだけに反論出来ない!!
「頑張りまーす。」
「頑張りますか、」
「何か?」
「いや、青春だなって思っただけ」
「どうした、ワトソン君」
「ワトソンじゃねー」
「そういえば最近仕事大変そうだね」
「ツッコミしてやったのに無視かよ、いい身分だな」
「へへへ」
「へへへじゃねーし、……ふっ」
「ん?」
「いや、何でもな…」
会話の途中、着信を伝える機械音が鳴る。
音からして奴のケータイからだ。
「わり、出ていい?」
「あー!いーよいーよ」
「はい、もしもし」
律儀に片手を顔の前に持ってきて私に了承を得てから電話に出る。
昔から、さらっと気遣いが出来る奴だったが成長してもそこは変わらないなぁ。
奴が電話している間、窓から見える高層ビルを一瞥し、自分の家からは見る事が出来ない高層マンションからの景色に目を細めた。
「……人がゴミのようだ」
「それ流行ってんの?」
「!!」
急に話しかけられたもんだから、ビックリして窓におでこをぶつける。
「で、電話終わりやしたか?」
「え、なんで急に変な喋り方になんの?」
「お前が急に感慨深い感想を言ってる時に入ってくるからだよ!」
「人をゴミ扱いしてんのに感慨深いもあるか!」
ペシ!
「うっ!」
「テレビの見すぎなんじゃね?」
「ムスカに謝れー!」
「は?」
「彼の台詞は全米を揺るがす台詞なんだよ!」
「お前もな、」
ペシ!
「う!二回も叩くなんてっう゛?」
「ハハ!その顔、傑作!」
喋っている途中で頬を押さえつけられてしまった!
お陰で乙女の顔が“ひょっとこ”みたいに!
ドカ!っと恨みをこめて奴の腹を殴ってやったら軽く咳き込みながらも懲りずに笑っている。
奴もまだまだ思考は幼いらしい。
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