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一階部分を見て回ったが、誰の姿も見えない。
マキナは上を見た。今にも崩れそうな天井が目に映る。
三階は未完成。なら相手は二階にいるという事になる。
マキナは一階を回った時に発見しておいた階段を使って、二階に上がり――――
そして、ある見知った顔と出会った。
「お久しぶり、そしてようこそいらっしゃいました、伊宮マキナ様」
斜め四十五度に腰を折り深々と頭を下げる、スーツをだらしなく着崩したこの男の名を、マキナは知っている。
「やっぱり生きてたか、霧咲」
霧咲――――機関に所属し、マキナ達アウグスティヌスを担当する謎の男だ。
約一ヶ月前、とある事件で霧咲は死亡したと彼を殺したという敵から告げられたのだが、マキナはその言葉を信じていなかった。
「お前は殺しても死ななそうだからな。……それで?お前がここにいるという事は、私を呼び出したのは――――」
「いえ、それは私ではありません。私は監督役として呼び出されたのです」
「監督役?」
マキナが眉を顰めた、その時。
「やあ吸血姫、こんにちは」
今まで薄暗かった部屋に、突然明かりが点る。それと同時に第三者の声が響いた。
マキナは黙って声のした方を見る。そこには暗くて見えなかっただけか、それとも明かりのように唐突に現れたのか、椅子に腰掛けた男が見えた。
顔は良く見えない。明かりが弱いせいだ。
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