序章

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さすがの五郎左も、勘忍袋の緒が切れたか、息子小十郎を蔵の中に閉じ込めた。最初の方は泣き叫ンでいた小十郎であったが、彼も彼なりの意地があり、父や母が蔵の扉を開けるまで、侍女が運んで来た食膳には一切手を付けず、只奉公人の源吉が毎日持って来てくれるお握り二つだけで、七日間を、蔵の中で寝て過ごした様であった。その七日目の朝ようやく小十郎は、蔵から出たのだが、風邪と高熱で倒れてしまい、五郎左もこれには少々、灸を据え過ぎたかと思ったが、それから十日後、小十郎の悪戯は、喉元過ぎればなんとやらの言葉通り、もとに戻っていた。
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