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「腕がないから…。」最後に残った片腕の男は話しはじめた。 三十代後半と思われるその男は背が高く痩せていて、鋭い目は足元のどこか一点に向けられていた。 赤いチェックのシャツにジーンズといういで立ちでうっすら髭を生やしていた。 「僕には、御覧の通り右腕がありません。母体内にいる時から腕の長さが普通の3分の1くらいしかなかったんです。その後生後2ヶ月ほどの時に何か良くない感染症にかかりまして、それで肩から下が切り取られたんです。」彼は左手で肩をさすった。 「右腕がないことでやはり不自由なこともありますが、例えばひもが結べないわけでして、従ってひも靴がはけないんです、ほら、こんなマジックテープの靴しかはけないんです。」 片腕の男は足を上げて見せて笑った。
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