偽物の暗殺

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……それから一ヶ月後。 「ハアッ、ハアッ…くそっ…」 「これで120勝10引き分けっと。俺から引き分け取るなんてなかなかやるな」と息が上がっている崋月に対し、汗一つかかずに涼しい顔で笑う。 ますます憎たらしい…。 奇襲をかけたり、料理に毒を持ったりしたが、涼しい顔で手のひらを転がす。 ちょこまかと動きやがって…。 背が高く細めに見える体躯だが、しなやかな筋肉が引き締まっていて、いくらみぞおちを狙ってもびくともしない。 「次こそは勝つ!!」 「こてんぱんにやられてまだそんな根性のこってるんだ?見てて飽きないからいいけど。」 「この、腹黒エセ公爵がっ…んー」と口を手で塞がれる。 「バカ、声が大きいんだよ!」と小声で怒鳴る。 けっ、いい気味だ。 実はこいつ、公爵家の跡取りである長男ではなく、影武者の次男。 名はアレンというらしい。 あれ?待てよ…と言うことはこいつを狙う必要はないのか? 「アレン、公爵家の跡取りである長男はどこにいる?答えればもう命は狙わずとも良くなるぞ」 「俺がやつの居場所を吐くとでも思う?」と冷ややかに嘲笑うと迫ってくる。 しかし後ろは壁だった。 アレンの顔が近くにあり、心臓がうるさい。 「こんなに隙だらけで、俺の命狙おうだなんて甘いね」 「っ…!?」 アレンに強引な口づけに抵抗するが、びくともしない。 アレンに離されると崋月はアレンの頬を打つ。 「最っ低!!あんたなんか、大嫌い!!」 崋月の行動に驚いて、目を見開いたまま立ち尽くしている。 すぐに崋月はその場から立ち去った。
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