幼なじみ

12/26
前へ
/45ページ
次へ
「なにって……日直だからプリント取りにきたんだよ。朝言っただろ」 「あ……そうだっけ?」 まだ話している里花と先生をちらっと見て、寿のほうに駆け寄る。 「……アホ」 はぁとため息をついた寿は、私に聞こえるか聞こえないかの大きさでそう呟いた。 でもそんな気遣いのようなものは意味なく、その単語はハッキリ私の耳に入る。 「アホアホ言わないでよ!」 「一回しか言ってないけど」 「さっき学校来てるときも言ったじゃん!」 登校中に寿に言われたことを掘り返す。 さっきは気力が無くて無視したんだけれど。 「聞こえたのかよ」 そう言ってハッと笑う寿の顔は一瞬くしゃっとくずれ、またいつもような顔を私に向ける。 「当たり前じゃん。朝は無視してあげたのよ!」 「なんだそれ」 またくしゃっと一瞬見せたそれはさっきとは違い、私を見ながらのものだった。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加