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アツシの視線の先は……私ではなく京子でした。
京子は口の端に笑みを作りながら、手に握り締めた鋏で、机に深く傷をつけていたのです。
力を込めて握っているのか、小刻みに手が震えていました……
それでも、俯いた顔には怒りは見せず、口元だけに微かに笑みを浮かべている京子の姿は……
アツシを怯えさせるのに充分でした。
「三班!何を騒いでいるの!」
担任の小柳先生が近づいてくると、京子は能面のように静かな顔に戻り、両手を膝の上に置いて俯いています。
……その日、アツシは先生から職員室に呼ばれて注意を受けました。
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