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「ふ~ん、そっかぁ、無茶しないでね」
「大丈夫、大丈夫、手加減するし、それに救護班が待機してるって言ってたし、でも...」
「でも?」
急に何か引っ掛かるような表情になった桜霞の発言に、少女はいやな予感がしてならなかったがここは訊いておくべきだと判断した。
「いや、コウがな」
「コウ?」
少女は窓から外で食事をしているコウを見た。
コウの体には朝日が反射し、美しい紅の輝きを放っていた。
(うわぁ、綺麗だぁ~)
「ミカ、訊いてるか?」
「え?あぁ、コウがどうしたの?」
「なんか、かなり張り切っちゃっててなぁ、このままいったら俺が手を下すまでもないかも」
「...マジ?」
「マジ」
再びコウを見ると、さっきは体に見とれていて気付かなかったが、コウはいつもより多めの肉に勢い良くかぶり付いていた。
「だ、大丈夫だよ、コウも手加減くらいするよ............多分」
「そうだよな、あのコウが手加減しないわけないよな」
少女が言った最後の言葉が聞こえなかったのか桜霞は吹っ切れた表情になっていた。
2人はまだ知らなかったこの後、新米兵士に起こる悲劇と静かに爪を磨いでるコウの存在を。
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