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「崇~。」
振り返ると、駆け寄ってくる俺の愛しい恋人、祐さん。
俺はとっさに左手をポケットへ隠した。
何故か反射的に体が動いた。
「仕事終わったのか?」
並んで歩きながら、祐さんは俺に聞いてきた。
「お、おう、まあな。祐さんも?」
「俺も終わったとこ。・・・ってことは、崇、このあと暇?」
「うん。一応。」
すると、祐さんはきれいな目をより輝かせて、
「じゃあ、お前ん家行っていい?久しぶりに2人でのもうぜ!」
「お、俺ん家?」
「ああ、そうだよ。え、なに、何かマズい?」
いや、マズいってわけじゃないけど・・・、左手が・・・・・・
徳井に「女連れ込むな」って言われてるし。
って、祐さんは男だから問題ないのか。
・・・いやいや、そういう問題じゃなくて、問題なのは左手のケガが祐さんにバレちゃうってことで・・・
でも、祐さんの誘いは断りたくないし・・・・・・
「崇?」
「ん?あ、ああ・・・ええと、俺ん家だよな。いいよ。」
「ホントか!?よっしゃ~!」
ほんとはよくないのだが、愛しい祐さんの頼みは断れない。
嬉しそうに笑う祐さん。
ああ、この笑顔を独占できてる俺は、きっと、世界一幸せ者だろう。
このときばかりは、左手の痛みが和らいだ気がした。
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