2人が本棚に入れています
本棚に追加
逃げているのは同じ部活の先輩で、追いかけている声の主はクラスメートだった。
「げっ!何やってんだ?」
先輩は慌てて立ち止まる。
俺らが渡り廊下の真ん中に座っていたせいだ。
「先輩こそ」
高塚先輩は部活でも、そこそこ速い方である。
追いかけていたクラスメートは息を切らしながら追いついた。
「あおいちゃん、追いかけなくてもいいから~」
高塚先輩は言うが、手に持つ鍵がクラスメートの追いかける原因だったのだろう。
「高塚先輩が鍵を取って逃げちゃうからです!佐田くんまで帰っちゃったじゃないですか!!!」
クラスではどちらかと言うと真面目、暗めの北川 あおいが声を荒げていた。
「あおいちゃんが見てないからだろ?」
「先輩は今日陸上だって聞いてました!!なんでうちの部室の鍵持って行くんですか!!」
必死な北川と相手しながら、高塚先輩は鍵を俺に投げた。
受け取ったのを確認すると、さっさと走り出す。
それを今度は由季が追う。
疲れ果てた北川と取り残された俺。
「大丈夫か?」
とりあえず、声をかけたが、返事はない。
しばらくして、ようやく北川は顔をあげた。
「ごめんなさい。あ、鍵!」
鍵に気付いたらしいので、渡すと、北川は両手でそれを受け取った。
「ありがとうございます。邪魔してごめんなさいね?部活なので、失礼します」
お辞儀をして来た道を走っていった。
最初のコメントを投稿しよう!