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そこで自然と二人の会話は途切れた。
視界に彼らの目標である三つの影を捉えたからだ。
細長く先陣を切るのは国栖竜だろう、その後ろにつく形で須佐と彼女に支えられる七好が疾駆している。
『また僕が強襲をかける、その隙を縫って断早君がちょっかいを出す形で良いね?』
ミサンガ型の通信用霊装を通じて光輝の脳に直接音声が伝わってきた。
視認できるほど近づいたことで声によって自分達の存在を気づかれるのを防ぐための処置だろう。
光輝が同意のために頷くのを確認して少年は通信を続ける。
『それで、断早君はどうやって彼らの意志を挫こうと言うんだい?』
光輝の目的は“彼らによって学園都市の学生が再び危険に晒されることを防ぐこと”であるのだが、学園都市に対する報復、もしくは交渉を行うために“学園都市があらゆる活動において依存する学生を使った取引”が有効である以上はそれが達せられることは難しい。
まずはそこから崩す必要があるのだ。
方法はいくらでもある、だがそのどれもが成し遂げるのは容易ではない。
『まずは話を聞いてみよう。アイツらのねじ曲がった“現実”を俺達が理解できなきゃどうにもできねえしな。』
数ある手段の中には、力で捩じ伏せ思想そのものを押し潰すという手もあるはずだ。
その方が学生の身を守るという点では直接的で最も手っ取り早い。
しかし、断早光輝という少年は無意識のうちにそれを手段候補の項目から除外していた。
それこそ、彼の潜在的思想ともいえるものが働きかけているのだろう。
『フフッ、やっぱり君は面白いね。僕よりもよっぽど“人”として理想的な思想を持ち合わせているよ。』
そうして少年は右目を見開くと、今度は両腕で大きく円を描いてから掌を合わせ、勢いよくその両の手を地面に押しつけた。
直後、地面がボコッと盛り上がりそれが蛇のように蛇行しながら駆ける魔術師達へと向かっていく。
彼らの足元まで到達すると“それ”が爆音とともに炸裂した。
ゴバアァァッッッ!!!!
土壌を撒き散らし、雪崩とも表現し得るレベルの爆発が彼らを飲み込んだ。
土石流は木々をなぎ倒し、大地は地層を捲られ、大気を粉塵が曇らせた。
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