第八章 青春特急学園都市発戦場経由終点未定

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「ふげごぐがばばぎょぶぎょじゅばあばばばなななばげぶれふぁぶれりごろろぼんすっっっっっっっ!!!!!!!!!」 言語ではないが明確な意思を持って音を発しているのは断早 光輝-タチハヤ コウキ-だ。 科学の最先端技術を結集した街“学園都市”の学生である彼は、まさに最先端の科学が生み出した“超能力者”である。 少し伸び出した黒髪に小顔で端正な顔立ちの琥珀色の瞳をもった少年は修学旅行として京都へ向かっているまっただ中だった。 最近導入された学園都市製のリニアモーターカーHsML-55“White Bird”。 超電導電磁石による浮上での走行を可能にしたものでは世界で初めて実用段階まで進められた超電導リニアである。 最高速度では600km/h超をゆうに記録した。 これはリニアモーターカーでは向こう百年は覆ることはないだろうとされているほどの記録だが、技術の上ではそれ以上の加速も充分に可能であり、理論的に導き出された最高速度では1056km/hとされている。 しかし、巨大な質量の物体にこれだけの速度を適応させてしまえば通行ライン周辺地域にも暴風発生で甚大な被害を与えてしまうため意図的に600km/hまで留めているのだった。 また乗客に対するGの影響についても配慮されていて、車体が受ける全ての運動ベクトルが内部に与える振動と速度によって発生するGを全て計算し、それに合わせて外部の走行システムとは別のスライド式運動量調整機構が内部を揺らすため乗客は運転中の振動をほとんど体感することがない。 その機構の調節と外の風量などの天候によって変動する速度調整などの複雑かつ正確な計算を可能にしているのが、中核を為す学園都市製の演算装置“スコアリーダ”である。 “樹形図の設計者-ツリーダイアグラム-”の下位互換であるこれはこの車体のために造られたものであり、最高速度を抑えるためのリミッターもここに搭載されている。 真っ白な塗装に最大限空気抵抗を無くしたスタイリッシュなデザインは鳥のくちばしを連想させる。
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