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その外部、扉と車体の隙間に指を突っ込んで、握力と能力で何とか現状を維持している断早光輝は絶えずぶつかり続ける空気の壁と戦っていた。
通常なら体験することないほどの風圧に顔を歪めながらも自身の斜め前方にいる“魔術師”の少年に意思を伝えようとひたすら声を出し続ける。
「ふにゃろぼがむしゃろごんべぇするともももざいがげっっっっっっ!!!!!!」
連続して口の中に大気が侵入し口の形を無理矢理変えるため、母音すらまともに発声できない(そもそも声を出すことすら難しい状態のはずなのだが)。
その眼の前の少年はこのような場所にも関わらずまるで風圧の影響など受けてないかのように平然と立っていた。
真っ白な外壁部に立つ魔術師の少年“Seth Woodman-セス ウッドマン-”。
青空を保護色にしたサラサラの短髪にホリの深い金色の瞳をもった超絶イケメンフェイスの美少年はその髪の毛とシュッと出した制服の裾をそよ風になびかせながら光輝の声に振り返る。
「まったく・・・、なんの対策も講じなければそうなるに決まっているじゃないか。ここは600km/hの世界だよ?」
半ば呆れながらのセスが光輝の身体に触れた瞬間、体が軽くなり今まで壁のようだった風が体感でそよ風ほどの優しいものになった。
まるで先ほどまでのパワーが嘘だったかのように体が軽くなる。
これもまた“魔術”なのだろうか。
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