鬼頭の花嫁

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桜と律は体育館に駆け込み、それぞれの学年の列の最後尾に並んだ。 「そして、今日からまた新たな学期が始まるにあたり――」 壇上の上には、年老いた老人 学園長が今、まさに新学期始まっての挨拶の最中で生徒たちは声をひそめるようにして話をしている。 夏休みの間に何をしていたのだの、今日はあまり寝ていないだの。さまざまな会話が飛び交う中、桜は柔らかい鼻腔を擽るような香りを微かに感じ下げていた顔を上げた。 「―――――、今のって」 瞬時に回りを見渡し、この香りに気付いたのは自分ただ1人だと確認する。 未だに香る柔らかな匂いの元を辿るように自分の列を真っ直ぐに見つめ、その香りの元である少女の存在に気付くのと同時に冷たい声が響く 「今日、花嫁が届いた」 壇上の上に立つ男は告げる。 離れているのに、その男の整った肢体はよくわかり、その顔は美しく、性別などは問わずに全ての人間が羨望の眼差しで見つめるであろう。 漆黒の美し瞳が一瞬だけ黄金に染まり、そしてその瞳を閉じる。 そして男、我が校の生徒会長 ――木籐華鬼は、その型の綺麗な唇を再び開き 「今夜、俺の結婚式を上げる」 それだけ告げ、鬼の頂点に座す男 鬼頭は去っていった。
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